おのぼり音楽紀行

ヴァイオリンと共にフランスに滞在。ゆるりと日々のこと、思ったことを書き記します。

visa

今ローマからパリに移動中の飛行機でこれを書いています。
パリは最近真冬の季節に入り、 マイナスの気温に入るようになりましたが、 ローマは偶然にも最高気温が20度の日があり、 太陽をいっぱい浴びて、素晴らしい文化に触れ、 元気いっぱいになりました。

しかし、 改めてローマは過去の遺跡がゴロゴロと眠っている街に今も首都を 置いてるので、こりゃ大変だなぁて思いました。

地下鉄も首都なのに、3本(メインは2本)しか走ってないし、 交通網がかなり不便です。

私は出身が奈良なので、 遺跡による不便さみたいなものをよくよく知っていますが、 奈良に今の時代も首都を置いたら…とゾッとしました。

それでもローマが素晴らしい街なことには変わりないのですが。

 

ところで、最近ようやくVisa を学生ビザからpasseport talentビザに変更できました。

いわゆる技術職にあたる人がこれにあたり、音楽家もそのうちのひとつとしてvisaを得られます。

フランスに受け入れてもらえたという感覚は、小躍りするぐらいに嬉しかったです。

 

いろいろと忘れてしまう前にどのような手続きだったのか書いておこうと思います。


コロナによる影響で数少ない有り難いことの一つに、 visaの申請も最近は全てオンラインでできるようになりました。

なので、 書類は全てオンラインでアップして申請で済みました。

以前はあげられない原本の書類もあったりするので、 原本とは別に、 渡すためのコピーを用意しなくてはなりませんでした。

けれど、 オンラインならオンラインで、 アップできるファイルの容量が小さすぎて、 pdfの圧縮と結合をアホほど繰り返して気が狂いそうになりまし た。

そういえば、フランスに初めて来たときにもvisa の手続きでした、キャンパスフランスのサイトでのアップできるファ イルの容量が小さすぎてイライラしたなぁと思い出しましたが、「あれ、それて10年も前の話…」 てなったのはここだけの話。

 

ちなみにこちらが私が提出したものです。

1.フランスでの過去の仕事の契約書全て
2. 銀行の3ヶ月の残高証明書
3. フランスで今後予定されている演奏会の契約書と、その一覧リスト
4. 自分の先生や、主に働いている団体の推薦状
5.過去のディプロム全て
6.CV

 

後から、過去の税金の申告書とか出さないとだめだったかも?! て思いましたが、 私は提出せずとも何も言われず無事終わりました。

最近はオンラインのおかげか、わりと審査も早くて、 足りない書類があった場合もわりとすぐに言ってくれるそうです。

なので、 とりあえずビザの申請はとにかくトライしてみるのが良いと思います。

次回はフランスのフリーランスの失業手当制度というものについて 書こうかなと思います。

帰国なのか遠征なのか

7月中旬頃までついに夏が来たとばかりに暑かったのに、 その後もう夏はおしまいと言わんばかりにすっかり涼しくなってし まった。

連日20度前後である。

涼しいだけならまだしも連日雨なので( スコールみたいな雨が降る)、 パリの人々の足元はサンダルからすっかりスニーカーになってしまっている。

去年は今年と打って変わって大変暑かったために、 雨戸を閉めきり(こちらは日差しがきついために、 できるだけ家の中を涼しく保つためには雨戸を閉める)、 薄暗い家の中で、 猫はタイルの床の上で死んだように体を冷やしているのを横目に、 論文を書くためにパソコンと向き合っていたのも、 遠い遠い夏の記憶である。


2年ぶりの日本に2日後に帰るのだが、 実家近くの天気予報をチェックすると当然連日35度超え。

日本はクーラーがあると分かりつつも、 私の体はついていくのだろうかと不安だけが付き纏う。
そして、久しぶりの日本は私の目にどう映るのだろうか。


とてもありがたいことに、 8月はほぼ毎週末違うコンサートをさせて頂きます。
特に8月末から9月の上旬まではマラソンとなります。
私の体力持ってくれよ〜と既に今から念じています。なむなむ。
お近くにいらっしゃる方はお気軽に足を運んで頂けますと幸いです 。


📅2023/8/13 開演13:30
薔薇の会@秋篠音楽堂(奈良)


📅2023/8/18 開演18:30
夜明け前 vol.3 
ベートーヴェン・弦楽四重奏の調べ@山本能楽堂(大阪)


📅2023/8/26 開演14:00
弦楽四重奏への道@Art Hall Timbre(奈良)


📅2023/8/27 開演13:30
弦楽四重奏への道@La Campanella(大阪)


📅2023/8/29-9/3 完売
ラ・フォンテーヌの物語@maenonagaya(奈良)
ヴァイオリン二挺の旅@ ei(奈良)


📅2023/9/6
第一部 開演16:00完売
第二部 開演18:00 残席あり
ラ・フォンテーヌの動物寓話集@8代葵カフェ市川店(千葉)


📅2023/9/8
ヴァイオリン2挺の旅@福生(東京)


📅2023/9/9
第一部 開演12:00
第二部 開演15:30
ヴァイオリン二挺の旅@オアシス妙典(千葉)


📅2023/9/10 
第一部 開演11:00
ラ・フォンテーヌの動物寓話集@JIKE STUDIO(神奈川)


第二部 開演14:30
ヴァイオリン2挺の旅@JIKE STUDIO(神奈川)

 

追悼

大学生時代にお世話になった先生のうちの一人が亡くなった。
とても急だったみたいだし、 連絡を取るような関係でも私は無かったので後悔は何もないけど、 先生との思い出を振り返る。
先生は生徒たちと実に距離の近い先生で、 本当に良い仲間という感じであった。

しかし、先生も人間、 先生には明らかにお気に入りの子たちがいて、 お気に入りの子の中に入られなかった私は蚊帳の外みたいなものを 感じたので、まぁいいやて思ったし、 私と先生との関係はその程度で終わった。

先生の書いた曲は必ず誰かのことを思って書いた曲で、 ある時その思われた演者が誰一人いなかったときに私はトップとして弾かねばならず、とても歯がゆい思いをした記憶がある。

楽譜から先生の意図を読み取ろうしたが、 そうではなかったらしい。

残念ながら、 そこから作り上げるほどの力は私にはなく、 ごめんなさいという感じで終わった。

その後先生との交流は一切なかった。
そんなわけで私は他の生徒たちほど、 先生からたくさんのことを学びはしなかったけど、 先生がしつこくしつこく言ってた台詞が何個かあって、 それを思い出す。

 

人の心というのは、脳でも心臓にあるわけでもない、 人と人と間にあるんだ。音楽も同じだ。


みんないつかは自分の名前を額に掲げて、やっていく日が来るんだ。

 

ロマンチックで熱かった先生。

「頼んだぜ!」 ていつもの決め台詞を言ってるような気がするので、 もう少し頑張りたいと思う。

本当にお疲れ様でした。

企画

とても幸いなことに、友人から彼女のお店で弾いて欲しいと前から言ってもらっていたので、今度の夏の私の一時帰国に合わせて是非とお願いした。

友人のお店は長屋のオープンなスペースで、これがなかなか心地良い場所なのである。

そんなコンサートホールでもない、素敵なスペースで弾けることは私にとっては嬉しさでしかないし、そんな特別な空間で何をしようかなぁと色々と想像を膨らませ、相談した結果、子供たちへのコンサートもしようと思い立った。

ちなみに正直なところ昔は、子供たちへのコンサートにあまり興味がなかったのだが、ヨーロッパでは子供に向けたコンサートというものが結構あって、それもなかなか良いクオリティで見ていくうちにこりゃいいなと思うようになったタイプである。

(しかもヨーロッパの子供はノリも良くて、なかなか可愛い。)

そんなわけで自分ができる限りの知恵と力と使って、せっせと企画に勤しんでいる最近である。

色々と想像することは楽しくて、具体的に形にできるのは喜びである。

私は昔から調べ物をするのが好きで、今回の企画にあたっても、せっせと調べ物をして時間があっという間に過ぎてしまう。

ヴァイオリンを弾くこと以外にも自分の好きなことができるのは、なんともありがたい話である。

また具体的に企画がまとまった際にはご報告致します。

 

ではまた。

 

 

 

 

振り返り

ブログを書くことにすっかりご無沙汰してしまった。

久しぶりに穏やかな時間を過ごしているので、少しここ最近のことを。

 

直近でなによりも強く思い出すのは卒業論文である。

なにを言おう、とにかく論文というもの自体をなめまくっていた。

こんなにも学業を続けてしまったし、せっかくだし論文書いてみたいなお花畑思考で始めた私にとって、文字通り地獄そのものだった。

辛過ぎたせいでもはや記憶から葬り始めているが、本当にいろんな人にお世話になったので(迷惑をおかけしたに近い)、それだけは忘れたくないと思っている。

そして全ての学者、研究者さんに尊敬の念を払いたい。

 

そもそも修士を無事終えられたことについて振り返っても、いろんな人にゴネまくったことがまず記憶に蘇ってくる。

そして大体私のお願いを誰かが聞いてくれて、ただただ感謝の思いしか込み上げてこない。

皆さま本当に有難うございました。

わたしもいつか誰かのお願いにちゃんと応えてあげたいと思っています。

 

次になんと留学一番最初の地であるParisに6年ぶりに戻ってきた。

転々としまくり、一度住んだ地には戻らないみたいなカッコつけたようなことをしてきたし、Parisで住んだ時期が一番辛かったのもあって、もうParisには戻るまいと思っていたのに、人生不思議なものである。

Parisは相変わらずParisで、でも当時付き合いのあった友人はほとんどおらず、時が過ぎたのだけは感じている。

 

ヨーロッパに来てとうとう10年経ってしまいましたが、日々パワーアップできるようにこれからも精進します。

 

 

エッセイ un essai

最近クラシック音楽界隈で熱いのは、ショパン国際コンクールがライブ配信されていることだ。

(といっても、これを書いている今は遂にファイナルの結果を待つのみとなってしまった)

言わずとも知られたピアニストの登竜門の1つでもある国際コンクールだ。

コロナで悪いことばかりの今日だが、ライブ配信でショパン国際コンクールを世界中どこからでも拝聴できるようになったことは、良いことの1つといってもいいだろう。

 

ちょうど先日、私は中村紘子さんのエッセイを読み終えたところで、実に面白かった。

エッセイの中にはショパン国際コンクールにまつわる話もあったのだが(彼女はショパン国際の入賞者であるだけではなく、その後何度も審査員を努めてらっしゃった)、偶然ショパン国際のネット配信の時期と被ったこともあり、現実味が出て大変興味深く読ませて頂いた。

中村紘子さんといえば、着物を着てピアノを弾いていた人というイメージが私にとっては強く、エッセイをたくさん書いて残していたとは私は恥ずかしながら全く知らなかった。

 

ちなみに音楽家が自伝書を書いていることはあんまり珍しくは無い。

多くの音楽家が「天才」と呼ばれるタイプの人種だし、そういう人がどうやって育ったのか、出来上がったのかはそれもまた多くの人々が気になることではあるので、自伝書がたくさんあるのも自然だと思う。

しかし自伝書の中にも、天才の頭の中を覗き込めた気になれる面白いものから、ナルシズムだけによって織りなされたものまである。

音楽家にはパフォーマーである以上、ナルシストであることも重要なことだとは思うのだが、分厚い本にまでそれがふんだんに込められていては個人的には辟易する。

 

ところが中村紘子さんのエッセイは全くそういうものがなくて、交友がとても多く、彼女の人柄の素晴らしさがひしひしと伝わってきた。

ピアニストとしてだけでなく、音楽家、教育者、そして著者としての活躍を通しての、彼女ならではの稀有な経験が詰まった1冊であった。

もし彼女がまだご存命で、今年のショパン国際を見ていたら、どう思って、どんなエッセイを残してくれたのだろうか。

そろそろファイナルの結果が出そうなので、今夜はこのあたりで。

 

 

 

6ヶ月ぶりのコンサート 

先日、実に昨年の9月以来、ほぼ6ヶ月ぶりに観客の前で弾く機会を得られた。

フランスは今でも11月以来コンサートホールや劇場は閉じられたままで、アーティストにとって生命線でもある「人前でパフォーマンスをする」という行為自体がほぼ不可能になってしまっている。

ではなぜ先日私は人前で弾くことができたかというと、教会のミサに音楽を組み込むというミサコンサートに出させてもらえたからである。

フランスでは最初に外出禁止令が出されたころ、ミサで人が集まった際にクラスターが大量に起きてしまったこともあり、宗教関連での集会は全て禁じられた。

がしかし、最近は「集会はできるだけ控えてほしい」という言い方に収まっているので、判断は各教会の牧師に委ねられている。

おかげさまでミサコンサートが無事行われたという次第だ。

 

弾いたものはペルゴレージのスターバト・マーテルである。

You Tubeにも載せていただいたので、時間があればぜひご覧いただきたい。

youtu.be

 

ありがたいことにミサコンサートは大盛況で幕を閉じた。

6ヶ月ぶりに生の観客からの反応を直接感じられたことは、予想外に私の心を強く打ち、改めて演奏会を行うことへの幸せをかみしめた。

同時に人々が音楽にやはり飢えているのだとも思えた出来事だった。

新型コロナによる影響で、今文化大国であるフランスでも、芸術文化がないがしろにされてしまっている。

仕方がないというのは分かる一方で、家の中で過ごす時間が増えた今、その時間を豊かにしてくれているのは、やはり芸術文化であるということを忘れては欲しくないというのが、私の思いである。

 

 

一時帰国 Le séjour temporaire

ずいぶんとご無沙汰してしまったが、今日本に一時帰国をしている。

というのも仕事もキャンセルになり、予定がすっかり白紙になってしまったので、もう夏は日本でゆっくりすることにさせていただいた。

今は14日間の自宅待機の最後の週なのだが、無事帰れるまではなかなかのストレスであった。

一つは学校の手続き上の問題、2つ目は飛行機が幾度とキャンセルになり、その度に対応に追われることになった。

しかし、喉元過ぎれば熱さを忘れるで、終わってしまえばストレスは記憶から抹消されるのが早い。

 

フランスはついに死者が3万人を超えたそうだ。

今はみんなマスクをして、アルコール消毒もしているからまだ良いが、秋冬が始まってしまえば、どうなることやら。

日本が安全とはもちろん言い難いが、ゆっくりさせていただくには日本は最高の場だと感じている。