パリでの生活はストレスも多かったが、良い思い出ももちろんある。
良い思い出の一つは夏にセーヌ河沿いでピクニックをした日々のことだ。
昨年に燃えてしまったノートルダム大聖堂の横で(ノートルダム大聖堂はパリの人にとっての名前のごとくいつでも見守っていてくれる、まるでみんなのお母さんのような存在だ)友人と話す時間は実に心地のいい時間だった。
美味しいバゲットとチーズと飲み物を持ち寄り、友人と語り合った夏の日々はまさに青春の1ページだった。
パリにいた時代、いい意味でも悪い意味でもかなり暇だったので、わりとブラブラいろんなところに足を運んだ。
ヨーロッパの中でもフランスのすごいところは、国籍問わず26歳未満のEU圏内で勉強している学生は、大抵の公立の美術館に無料で入られることである。
22歳でパリに住み始めた私にとっては、本当にありがたいシステムだった。
しっかりとその恩恵に与りながらも、世界の宝でもあるフランスの国宝で金の巻き上げを図るだけではなく、若い人に惜しみなく見せる姿勢に感銘した。
フランス人が自国の文化に誇りを持てるのも、こういう小さなことの積み重ねなのかなと思っている。