おのぼり音楽紀行

ヴァイオリンと共にフランスに滞在。ゆるりと日々のこと、思ったことを書き記します。

冷凍食品フルコース Le menu des alimentaires surgelés

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先日の旅の思い出。

フランスは大西洋と地中海に面している国だが、パリは内陸の街だし、海のない街に住んでいる人も結構多い。

私の住んでいる街も内陸の街で、魚介に飢えまくっていた私は友人を誘って、地中海に面したパリの次に大きな街マルセイユに2泊3日で行くことにした。

というのも、格安航空会社のRyanAirのチケットが往復25ユーロだったのだ。

それでも利益が出るのか、いまだに謎だが、私たちの決断までに時間はかからなかった。

 

しかし結局女2人旅となると、買い物旅行と化した。

贅沢にコースのランチを頂き、買い物と観光をしたので、当然の出費がかさむ。

そこで我らがとったせめてものの出費を抑える償いに、滞在先のすぐ隣にあった冷凍食品スーパーPICARDで晩御飯を用意することにした。

www.picard-frozen.jp

最近東京、神奈川と進出を果たしているようで、ご存知の方もいらっしゃると思うが、PIcardは元々フランスの冷凍食品のみを扱うスーパーだ。

ちなみに店内は商品が全て冷凍庫の中に収まってスッキリしているので、まるで近未来に来たような感覚になる。

実は私、PICARDを利用したのはこれが2度目で「所詮冷凍食品スーパーでしょ」となめまくっていた。

 

食べてみると、びっくりするぐらい美味しい。

はずれのものもあったが、当たりのものがほとんどで、私の料理する気力が一気に削がれるぐらいのクオリティだった。

恐ろしいことに、作らなくとも美味しい世の中はすぐそこまで来ている。

 

 

フランスの魅力ってやつ  La fascination de Paris

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パリでの生活はストレスも多かったが、良い思い出ももちろんある。

 

良い思い出の一つは夏にセーヌ河沿いでピクニックをした日々のことだ。

昨年に燃えてしまったノートルダム大聖堂の横で(ノートルダム大聖堂はパリの人にとっての名前のごとくいつでも見守っていてくれる、まるでみんなのお母さんのような存在だ)友人と話す時間は実に心地のいい時間だった。

美味しいバゲットとチーズと飲み物を持ち寄り、友人と語り合った夏の日々はまさに青春の1ページだった。

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パリにいた時代、いい意味でも悪い意味でもかなり暇だったので、わりとブラブラいろんなところに足を運んだ。

ヨーロッパの中でもフランスのすごいところは、国籍問わず26歳未満のEU圏内で勉強している学生は、大抵の公立の美術館に無料で入られることである。

22歳でパリに住み始めた私にとっては、本当にありがたいシステムだった。

しっかりとその恩恵に与りながらも、世界の宝でもあるフランスの国宝で金の巻き上げを図るだけではなく、若い人に惜しみなく見せる姿勢に感銘した。

フランス人が自国の文化に誇りを持てるのも、こういう小さなことの積み重ねなのかなと思っている。

 

土地の場所によって考え方も変わる  Nous subissons l'influence du milieu

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留学と一括りにしても、その留学自体がどのようなものになるかは実に多種多様だと思う。

 

以前私は4年フランス、パリで過ごした後、ベルギーに1年滞在した。

パリでの4年目の生活は私にとって、間違いなく最も寂しい1年だった。

というのも同時期から日本から来ていた留学仲間は全員完全帰国ないし、違う土地に行ってしまい、前年までついていた先生との関係はあまり良好ともいえず、しかもその年のクラスの門下生はなんと私一人だった。

先生は素晴らしかったが、新しい仲間もできず、孤独を実感することが多かった。

 

翌年私は新天地を決め、ベルギー、ゲントに移住した。

いつかビザ申請のことを国ごとに比較したいと思うが、ベルギー大使館での申請の段階から感じがとても良かったので、意気揚々とベルギーに移住したのを覚えている。

結果、私にとってベルギーでの暮らしは天国であった。

地方都市ゲントであったのも大きかっただろうが、何より安全で活気のある美しい街だったおかげで、生活は一変した。

 

慣れなければいけないと、必死で生きてきたストレスフルなパリでの生活が一瞬で消え去った。

「これ以上厄介ごとが増えてたまるものか」と常にスリから身を守ってきた日々とおさらばできたのだ。

(パリは本当にスリが多い)

美しい街中をゆっくり歩けて、毎日好きな格好でおしゃれができて、学校に行くと「やぁ、元気?」と声をかけてくれる友人がいることは些細なことのようで、本当に嬉しかった。

留学とは孤独な闘いという私の常識が崩れ去ることになる。

 

留学するのには、先生との出会いやきっかけが重要だと思うが、やはり環境も人を作るので、住む土地はよく考慮した方が良いというのが私の今の考えである。

当たり前か。笑

すごいヴァイオリニストを紹介してみる  Le violoniste formidable

今回はちょっと風変わりなヴァイオリニストを紹介したいと思う。

 

ロビー・ラカトシュ(Roby Lakatos)である。

Sをシュと発音するあたりからご想像つくと思うが、ハンガリーのブダペスト出身。

一度見たら忘れられない風貌である。

 

以下Wikipedia より

ロビー・ラカトシュは、ハンガリーの男性ヴァイオリニスト・作曲家。ハンガリーに古くから伝わるロマ音楽をベースとし、ジャズやクラシックの要素も取り入れた独特の音楽スタイルで、その素晴らしい技術から「超絶技巧」などと評される。

ちなみにバイオリンの弦をプロデュースしちゃったりもしている。

 

ハンガリー出身だが、今はベルギーにお住まいで、風の噂によると、かの素晴らしいベルギーが輩出した名バイオリニスト、ウジェーヌ・イザイ(Eugène Ysayë) の住んでた家の近くに住んでいるとか、いないとか。

 

元々、私はこの人のことを欠片も知らなかった。

彼のことを知るきっかけは以前ブログに書いた、大学の時の恩師からだった。

(恩師についての記事はこちらから)

kasumiviolino.hatenablog.com

 彼女は時々とてつもない出会いとか色々と引き寄せる体質を持っていらっしゃる。

そんな彼女、ある時移動している際に偶然目立ちまくってるラカトシュを見かけたらしい。

で、すかさず大ファンだったという彼女は勇気を持って話しかけたそうな。

そしたら面白いことに「今からバーに弾きに行くんだけど、君も来ない?」という流れになり、一緒に飲みつつ彼からバイオリンを習ったとのだとか。

出会いて面白い。

 

そんな出会いがあったことを彼女はすかさず私に話してくれたが、私はその後特にラカトシュのことをググることすらしなかった。

しかし私がベルギーを離れるという時に「ベルギーを離れる前にラカトシュ見といたら?」という恩師からのメールをもらい、ようやく調べた。

すると、なんとブリュッセルの小さな箱での演奏会を発見。

こうして何年も経って初めて、私は彼の演奏を聴くことになった。


キング・オブ・ジプシー・ヴァイオリン ラカトシュ・アンサンブル①

 

その夜はジャズの即興での演奏で、ピアノ・コントラバス・ヴァイオリン2台の編成で、ラカトシュは音色もセンスも超絶技巧もとにかく度肝を抜くぐらい、素晴らしかった。

ヴァイオリンといえば、超絶技巧ができるのも一つの魅力だが、彼の超絶技巧は聴衆の心をウキウキさせつつも、どこか温かみを感じられた。

人を凍りつかせるような超絶技巧も一つの魅力のあり方だろうが、私がこの夜に聞いたラカトシュの演奏は決してそんなものではなかった。

そしてさらに凄いのが、ラカトシュの使ってる楽器はかの名器ストラディヴァリウスなのだ。

 

本番後私はラカトシュに話しかけてみると、これまた想像以上に上品なおじ様であった。

見た目だけではもっと陽気なイタリア人みたいな人を想像していたので驚いたが、演奏を聴いた後だったので人格者なんだろうなと妙に納得した。

本当に良い夜だったことを今でも覚えている。

 

時間のある方はぜひ彼の演奏を聴いてほしい。


Fire Dance


ラカトシュ with ミュージカル・フレンズ


ラ・パッション ~ ライヴ・アット・シドニー・オペラ・ハウス (La Passion ~ Live at Sydney Opera House / Roby Lakatos & Ensemble) [2SACD Hybrid] [輸入盤]

イースター休暇  Les vacances scolaires

フランスの学校には、夏の長い長い夏休み以外にも2週間のバカンスがいくつかある。

秋休み(日本でいうお盆も兼ねている)、クリスマス休暇、冬休み、そしてイースター休みの4つだ。

基本的に6週間授業を行ったあと2週間の休暇というサイクルだ。

ちなみにフランス全土で被らないように、地方によって学校休みはズラされている。

パリ近郊は私の地方より1週間早く始まり終わる。

それにしても日本の学校と比べたら、驚きの休みの多さである。

それでも優秀な子供が育つというのだから不思議なものだ。

 

このコロナ騒動の間でもイースター休暇と称して、今週は学校が休みになった。

私の母は呆れていたが、慣れない環境下で教える努力をした先生方にはぜひ休暇を取っていただきたいと思っている。

なんなら、どこにも出掛けられない休暇とは、いつもと特に変わらない暮らしで、あまり休暇とも言えないだろう。

 

私は実は今日日本に帰る飛行機を予約していた。

飛行機、用事が全てキャンセルになったが、幸い飛行機の予約変更は無料だったので、飛行機の予約は延期することにした。

本当だったら、明日の今頃、日本にいたのかなと思うとちょっぴり寂しい。

そろそろ和食でも作ろうかな。

食いしん坊で良かったこと Soyons gourmand!

日曜日の今朝、昨晩のみんなでの話し合いの結果(というのも毎日の料理担当を分担しているため)お母さんの手作りのワッフルが朝食だった。

とても美味しくて幸せを少々噛み締めてしまった。

 

私を知っている人はよく知っているが、私はわりと食いしん坊である。

甘党の母と辛党の父の「英才教育」のもと、おかげさまで私は好き嫌いのほぼ無い、しょっぱいものにも甘いものにも目がないただの食いしん坊に育った。

父の食への教育モットーが「決して食べず嫌いはするな」というものだったので、無駄にそこは素直に育った私はとにかく食べてみるというのが習慣付いた。

 

結果、まぁそれで良かったかなと思う。

美味しいものを誰かと一緒に食べて「美味しい」を共有することは、言葉が無くとも幸せを分かち合えるものということを、ヨーロッパに来てからより一層感じられるからだ。

私は職業柄、いろんなところへ行って、知らない人と初めましてをすることがそこそこ多い。

そんな場面で初対面の人と打ち解けられるのは、いつも美味しいご飯とお酒を共有できた時だ。

美味しいものに国境は無いのではと私はしみじみしている。

今はどこにも行けないけど、またいろんな場所の美味しいレストランに行ける日が早く来ますように。

進化しない奴は生き残れない On devrait toujours évoluer

今日は少し真面目な話。

 

昨日は自宅待機始まって2度目のオンラインレッスンを受けた。

不運か、幸運か、今は私自身を生徒を一人も持っていないので、レッスンをする立場にはなく、一方的に受ける側だ。

音楽家の間で今までもスカイプレッスンと呼ばれる、オンラインレッスン自体は存在していたが、正直少し冗談めいた響きがあって、本当に緊急の際にしかやらないものというのが私たちの共通認識だったと思う。

それが今回の自宅待機以来、オンラインレッスンを享受するのが唯一の方法であり、生徒を抱えてる先生の義務に変わった。

特にクラッシック音楽は些細な差が大きな差となる厄介な音楽なので、オンラインレッスンにおいて、ネットと機械を通した結果、音のクオリティが下がったりすることはもちろん障害である。

Facebookではこんな画像も回っていた。

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facebookより

これは生徒が「先生、それはネットの接続のせいです。だってここではめっちゃ良く鳴ってますよ」と言ってる絵である。

もちろん冗談の絵だが、皆半分は同意していると思う。

 

オンラインレッスンが実際のレッスンとはかなり勝手が違うのは百も承知だが、やはり生徒も先生もそれに対応しなければ、今のこの状況下では時間をただ潰すのと等しいと私は思う。

そんな私が思った点を、ここにとりあえず書いておこうと思う。

 

1.弾くことによる模範演奏は、オンラインレッスンの間は極力避けたほうが良い

私は、もともと生徒にひたすら弾いて手本をみせる先生があまり好きではない。もちろん初心者には手本を見せるべきだと思う。子供は直感的に物事を理解をするのが上手なので、効率がいいのは言うまでもない。だが、ある程度熟練の人に対して、ひたすら弾いてレッスンをするのは、まるで先生のコピーをしろと言ってるようで吐き気がする。テクニックを説明するのに手本を見せるのは有効だが、音楽性を説明するのにただ弾いて説明するのはそうとは言えないと思う。そこでオンラインレッスンとなると、ネットが遅いと動作と音が一致していないので見本も見本にすらならず、説得力には欠ける一方だ。

2.カメラと楽譜はできるだけ側に置く

ヴァイオリンを弾く上において、弓順はかなり重要だ。というのも弓はアーティキュレーションを操作するもので弦楽器奏者が最後まで苦労するのが、音程より弓の技術と言われている。それで先生がより良い弓順を生徒に教えるのはよくあることだ。それがオンラインだと、もし先生を映し出してるスクリーンと楽譜があまりにも離れていると、先生の弓順を楽譜を見ながら追いかけて行くのが大変になる。それぞれをできるだけ近くに置けるように工夫するのが得策だと思う。もし先生が、楽譜と自分の映像を同時にスクリーン上に映し出せる技術を持っていたら、言うことはない。

3.クオリティの追求ではなく、とにかくたくさんの音楽を読むことに集中する

最初にも述べたように、とにかく機械を通してしまっては音のクオリティに何か言及するのは難しくなる。そこで音楽を深く追求していく期間とは思わず、とにかくたくさんの音楽を譜読みすることに時間を注ぐのが、今を過ごすのに効率がいいと思う。楽譜をたくさん読むことは初見の勉強にもなる。

4.伴奏の録音を送る、もしくは伴奏も練習するように要求する

ネット環境が昔よりずいぶん進んだとはいえ、さすがにネットを通じて合唱、合奏するのは今はまだ無理である。バロック音楽は先生が通奏低音を一緒に弾いてレッスンを進めるのが定例だが、もちろん今は無理。じゃあこれも伴奏を勉強する機会と捉えたほうが良いのでは。先生が前もって伴奏を録音してあげて音源を送るのもあり、今流行りの多重録音をしてみるのもありだろう。

 

なんだか偉そうになってしまったけど、オンラインによる環境に少しでも慣れていかないと、時代に取り残されて行くのを最近しみじみ感じている。

今のこの不自由な環境をいい勉強時間に費やせたら、まだましなんじゃないかと思う次第です。

イベント企画するのもたまにやるとめちゃくちゃ楽しい Si on ferait le plan de projets?

とにかく毎日家にいると、刺激がとにかく少なくなる。

老後とはこんなもんかと想像がつきやすくなった。

老後まで生きていればの話だけど。

 

そんな中でイベント企画をしてくれる人がいてくれると、とてもありがたい。

私はもともと「これをしたい!」と発案するより、どちらかというとそれをせっせと実行に移す方が好きだ。

しかも女性という生き物は「デートに行くこと自体より、デートの準備をしている時間が何より幸せなのだ」という話をどこかで聞いたが、まさに私はその模範だ。

 

今日、お昼間に家族の娘の一人がこんな手紙を持ってきてくれた。

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これは今晩のお家ディナーへの招待状で、あなたの一番素敵な格好で来てね!という内容。

 

こちらの子は小さい頃から自分の誕生日会を開くとき、自分で招待状を書いて友達を呼ぶらしいが、この年になって手書きの招待状をもらうなんて思いもしていなかった。

今夜は何を着ようか、今から楽しみである。